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中国「拘束日本人」はなぜ還らぬ

「十人」解放交渉で無気力の安倍政権

2020年2月号

 春節を迎えた中国には、約十二万人の日本人が在留している。大多数が望んで中国で生活している一方で、現地法を犯して当局に逮捕され拘留されている邦人もいる。中でも、スパイ活動をしたという容疑をかけられ、中国当局に拘束されたままの日本人が少なくとも十人おり、彼らが帰国する目処は一向に立たない。昨秋発生した「北海道大学教授拘束事件」は異例の経過を辿って、わずか二カ月でスピード解決した。この事件がいかに特殊であったかを紐解くと、他の日本人が還ってこない理由が浮かび上がってくる。
 北大法学研究科の教授、岩谷將氏が北京市内で拘束されたのは、昨年九月のことだった。岩谷氏は同月三日に中国社会科学院近代史研究所の招請で北京入りし、八日に国家安全省の関係者が滞在先のホテルを捜査し、機密資料を押収した。岩谷氏は取り調べで「過去も含めて大量の機密資料を収集していた」事実を認め、当局は刑法と反スパイ法違反に当たると認定。しかし国家安全省は急転直下、十一月十五日に保釈し、岩谷氏は同日、帰国の途についた。
 以上は中国政府の発表による情報だ。対する日本政府は岩谷氏の北京での行動はおろか、今日まで・・・