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WORLD

先進各国「公共放送」の苦境

視聴者離れと「権力介入」の脅威

2020年4月号

 世界の公共放送が厳しい冬の時代を迎えている。インターネット利用の発達で、米欧ではメディア利用者が、半分以上の時間をインターネットに費やすようになった。テレビとラジオを合計しても、メディア利用時間の半分以下にまで減っている。
 テレビ視聴率争いでは、新しい巨大エンタメ産業に押され、一部の国ではニュース番組でも優位を失った。「時代遅れ」「過去の遺物」との声が強まる中で、今年のコロナウイルス大感染では、新たな方向性も見えている。

「若者には無用の長物」との酷評

 世界の放送関係者にとって、英オックスフォード大学とロイターズ研究所が昨秋発表した、「公共放送視聴者報告」は、大きなショックだった。調査は英独仏など欧州連合(EU)八カ国を対象に、ニュース番組に限って公共放送の影響力を調べた。
 それによると多くの国で、「主なニュース源」として公共放送をあげた人は、「フェイスブック」と「ユーチューブ」をあげた人の合計よりも少なかった。八カ国のうち英国、ドイツ、フィンランド、イタリアでは、公共放送が勝った・・・