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連載

日本の科学アラカルト 116

「IoT時代」のエネルギー源 高効率熱電材料の開発

2020年4月号

 熱エネルギーと電気エネルギーを互いに変換する「熱電効果」と呼ばれる現象にはいくつかの種類がある。二種類の金属を二カ所で接合して閉回路をつくり、二つの接合部を異なる温度に保つと、回路の一方向に電流が流れる。これが「ゼーベック効果」と呼ばれるもので、温度の高低を逆にすると反対方向に電流が流れる。いわゆる「熱電対」とも呼ばれ、二百年以上前に見つかっているものだ。
 また、異なる二種類の金属を接合した上で、そこに一定条件下で電流を流すと、通常の金属に電流を流したときの発熱以外の、熱の出入りが起きるのが「ペルチェ効果」と呼ばれるもの。ゼーベック効果の反対の現象といえ、こちらの場合は電流から温度差を生むものだが、やはり電流の方向を反対にすると吸熱と発熱が逆転する。
 これ以外に、単一の金属に温度勾配がある際に電流を流すと、やはり発熱や吸熱が起きる「トムソン効果」と呼ばれるものがある。
 この中でストレートに実用化されているのはペルチェ効果だ。接合するのは金属だけでなく半導体でもよく、すでにペルチェ素子というデバイスが実用化されている。この素子を利用すれば、ファンや冷・・・