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経済

米「テスラ株」狂騰に漂う死臭

時価総額「トヨタ超え」が破裂する時

2020年8月号

「テスラは、金色のアクセントがついたカッコいいキラキラした赤のサテンのショートパンツをつくるだろう」。電気自動車メーカー大手テスラのイーロン・マスクCEOは、七月三日、自身の公式ツイッターで勝利のつぶやきをした。同氏は、この数年テスラを空売りする投資家(ショートセラー)との舌戦を続けてきたが、この一年で同社株は急上昇、圧勝してみせたのだ。そして、「ショートパンツ」のアメリカンジョークで仕返しをしたのである。テスラは七月一日、トヨタ自動車を抜いて時価総額で世界最大の自動車メーカーとなった。しかし、昨年の販売台数で比較すると、トヨタが一千万台を超えるのに対し、テスラは四十万台に満たない。テスラ株は今の危うい米国、そしてバブルの様相を呈する世界の株式市場の象徴である。
「勝利のショートパンツ」は実際に「六十九・四二〇ドル」で発売された。マスク信者が殺到してすぐに売り切れになったが、この価格にも皮肉が含まれている。二〇一八年に「一株あたり四百二十ドルで株式を非公開化する」旨をツイートし、投資家を惑わせたとして米証券取引委員会(SEC)から提訴されて罰金を支払った事件があったが、その際・・・