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米金融市場「バイデン相場」の始まり

コロナ不況下での危うい株高

2020年9月号

「カマラ・ハリスだ。心配無用」
 こんなメモが八月十一日の午後から翌十二日朝にかけ、ウォール街の証券会社やヘッジ・ファンドから顧客に一斉に流れた。十二日のニューヨーク証券取引市場は朝から買いが先行し、S&P500は、三三八〇・三五まで伸びた。新型コロナウイルス感染拡大前の史上最高値の寸前だった。
 彼女はジャマイカ人の父、インド人の母を持つ、米国最初の「有色人種の女性副大統領候補」である。当然、社会問題や人種問題での姿勢は厳しい。ドナルド・トランプ大統領は「ひどい女、意地が悪い」「議会で最左派」と、本当に嫌そうな顔をした。
 ウォール街は対照的に、「極左派ではない」と冷静に評価した。翌週は民主党全国大会が四日間にわたって開かれた。オンライン会議ながら盛り上がりを見せ、株価はさらに続伸。S&P500とナスダックは史上最高値を更新した。

「予測不可能」から脱する期待

 八月の市場は、二重の意味でおかしかった。
 まず、実体経済は新型コロナウイルスにより、「コロナ恐慌」といっ・・・