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連載

Book Reviewing Globe 437

不確実性と共存する方法

2020年10月号

 いつの世も、人々は不確実性の時代に生きていると思うものである。不確実性はリスクとは違う。リスクはそれを管理することができる。それに比べて、不確実性は管理できない。何かが起こっているのだが、何が起きているかわからないし、何が起こっていないのかもわからない。
 リスクと不確実性の違いを深く思考したのは戦間期の英ケンブリッジ大学のジョン・メイナード・ケインズと米シカゴ大学のフランク・ナイトの二人のエコノミストだった。第一次世界大戦から第二次世界大戦への危機の二十年、国際秩序も国内秩序も崩壊し、資本主義も自由民主主義も瓦解し、共産主義とファシズムが台頭した。むき出しのパワー・ポリティクスがルールと規範にとって代わった。予測不可能な不確実性の時代だった。いままた、そのような時代に入りつつある。「ラディカルな不確実性」の時代と名付けてもよいかもしれない。
 その一方で、AIやビッグデータやブロックチェーンの技術革新が急速に進んでいる。それによって何事も計測でき、何人も検索も詮索もできるようになった。物事を予測するありとあらゆるソフトウェアが市場に出ている。人類は不確実性を克服・・・