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経済

錆びつく 「日本製鉄」の末路

「衰弱」は一段と速まる

2020年11月号

 日本製鉄が国内高炉の廃止、海外事業の撤退、関連事業の整理を加速させている。新型コロナ感染拡大による鉄鋼需要の急激な落ち込みという足元の状況もあるが、「鉄の未来」が見えなくなりつつあるからだ。国内需要が根強い中国が世界の過半の鉄鋼を高炉生産し、先進各国はスクラップを電炉でリサイクルする縮小均衡の展開。自動車向け鋼板では日本製鉄は技術的優位性があるが、自動車自体が「脱鋼板」に動き、技術を発揮する場所は狭まる。明治以降の「鉄は国家なり」の金看板は手仕舞いの時期に来た。
 十月、日本製鉄には良いニュースと悪いニュースが交錯した。良いニュースは、休止していた東日本製鉄所(千葉県)と室蘭製鉄所(北海道)の高炉一基ずつを通常操業に戻す決定だ。国内の建設、自動車などの需要が回復に向かってきたことに対応した。経済産業省も十〜十二月期には粗鋼生産量が3四半期ぶりに二千万トン台に回復するとの見通しを発表しており、強気に転じた。
 悪いニュースは、米国インディアナ州にある自動車用鋼板の加工工場の売却計画。一九八〇年代、ホンダに始まり、トヨタ自動車、日産自動車などが相次ぎ米国中部に工場進出・・・