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連載

現代史の言霊  第32話

十二月の敗北 -二〇〇〇年米大統領選挙-
伊熊 幹雄

2020年12月号

《私は国家の分断より結束を選ぶ》
アル・ゴア(米元副大統領)

 もめる米大統領選と言えば、二〇〇〇年の共和党のジョージ・ブッシュ(子)対民主党のアル・ゴア両候補の闘いに尽きる。ドナルド・トランプ大統領は極度にわがままなだけだが、「ブッシュ対ゴア」は双方が知恵の限りを尽くした、政治スリラーであった。

「フロリダの投票用紙が変だ」

 投票日十一月七日の朝。ゴア陣営幹部のロン・クレインは、最初に変調を知った一人だった。知人が電話で、「フロリダ州が妙だ」と告げた。「投票用紙の形が変だ。間違ってゴアではない候補に投票した人がたくさんいる」と言う。
 同州パームビーチ郡の投票用紙は、紛らわしかった。パンチカードの読み取り機用に、穴の列が用紙の真ん中にあり、左側にブッシュ、ゴアら六組の正副大統領候補が、右側に四組の候補が印刷されていた。羽を広げた蝶のようで、「バタフライ用紙」と呼ばれた。
 一番上の穴が左側のブッシュ組、二番目の穴が右側の・・・