三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《クローズ・アップ》石井 敬太(伊藤忠商事次期社長)

“番頭さん”突然交代で高まる不審

2021年2月号

 嘲弄と〝不審〟の声は日を追って高まっている。
「あの会社の社長は何なんだ」
 伊藤忠商事の社長に四月一日付で専務執行役員の石井敬太が昇格する。まったくのダークホースにメディアも競合商社も驚いたが、何よりこの時期の社長交代を誰も予想していなかった。代表権のない副会長に退く社長の鈴木善久はまだ在任三年目。今年度四千億円の純利益を掲げる伊藤忠は、コロナ禍の打撃が大きい三菱商事を抜いて実質初のトップ商社に立つとみられ、鈴木はその社長の栄誉に輝くはずだった。
 しかし、一月十三日、わずか三十分のオンライン会見で鈴木が語った交代理由は「来年度からの次期中計を進めるうえで(石井が)最適任」だった。なるほど、新中期経営計画は「SDGs」への貢献を標榜している。エネルギー・化学品担当トップの石井は、蓄電池やバイオプラスチックなど環境ビジネスを手掛けてきた。担当の業種横断の手腕も伊藤忠の課題である「商品縦割り」の打破に役立つ。が、理由に説得力がない。
 石井の出身部門の化学品は、生活消費関連事業が花形の伊藤忠にあっては日陰の存在。元来、メタノールなど基礎化学品をも・・・