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連載

をんな千一夜 第42話

尊王志士を守った「売れっ妓」
石井 妙子

2020年9月号

《木戸 松子》

 コンコンチキチン……と祇園囃子が風に乗って街に流れる。京都の夏の風物詩といえば、この祇園祭につきようが、今年は新型コロナウイルスの影響で祭のクライマックス、山鉾を人々が曳いて市中を練り歩く「山鉾巡行」が取りやめられた。
 祇園祭の始まりは八六三年。清和天皇の統治下、京の都では疫病が猛威を振るい、市中を南北に流れる鴨川の河原には屍が積み重ねられたという。翌八六四年には富士山が噴火。さらには播磨国(兵庫県)や三陸沖で地震が起こる。天変地異に連動して政情も不穏となり、宮中では裏切りや謀反が繰り返されていたという。
 それから一千年以上の歳月を経て、今の日本も同じような状況にあるのだろうか。コロナ禍は収束せず、富士山噴火の予兆が見られると囁かれ、大きな地震は高い確率で近い将来に必ず起こると予測されている。異常気象による災害も続発し、熱中症で死者が出る。政治は滞り、総理の足元は揺らいでいる。疫病退散の願いを込めて、平安の人々は祇園祭を始めたというが、私たちはいったい、何をしたらいいのだろう。やはり祈るより他、・・・