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経済

「ウーブン・シティ」トヨタ章男の勘違い

スマート都市で「周回遅れ」の日本

2021年3月号

 トヨタ自動車が富士山麓で進める“Woven City(ウーブン・シティ)”の建設に着手した。「モビリティの未来」を探るスマートシティである。電動化、自動運転、カーボンニュートラルという大変革期の自動車会社として、野心的だが、当然の動きといえるだろう。だが、スマートシティはSFの未来都市ではなく、大都市の深刻な課題の解決策である。多様な人やモノが行き交い、過密で混乱した大都市の問題に対し、更地につくる理想的な“実験室”で解決策を見つけることができるのか? トヨタが求める未来の移動手段の実験と途上国含め世界が必要とする真のスマートシティの間には大きな溝がある。
「二月二十三日に鍬入れしようと思っている」。昨年十一月の中間決算発表で豊田章男社長はWoven Cityについて饒舌に語り、着工期日を示した。「二二三」は「ふじさん」と読めるからだ、という。「織り上げた都市」を意味するWoven Cityは閉鎖したトヨタの東富士工場跡地に建設され、イメージビデオでは確かに富士山の眺望は素晴らしい。そのコンセプトの根幹は「三本の道」である。自・・・