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経済

卸電力取引所「狂乱相場」の全内幕

「停電危機」でぼろ儲けした輩たち

2021年3月号

「東電EPを訴える!」
 一月三日、東京電力グループの新電力、テプコカスタマーサービス(TCS)の会長・山崎剛は殺気立っていた。西日本では昨年末から厳寒が続き、松飾りも取れないうちから電力需要が急増、TCSは親会社である東京電力エナジーパートナー(EP)、すなわちグループの電力販売会社へ卸供給の増量を要請した。しかし、回答は増量どころか、一切の供給を停止するという通告だった。
 見捨てられた……、山崎はそう受け止めただろう。同時に血が逆流したに違いない。「明らかな電力販売契約違反だ。一体どうすればいいんだ!」と―。
 実はこの日、持ち株会社の東京電力ホールディングス(HD)は急きょ取締役会を開いていた。グループ総帥の社長・小早川智明、東電EP社長・秋本展秀らが緊張の面持ちで協議したのは需給対策。三日の時点では、供給逼迫は西日本より関東圏の方が深刻だったのだ。すでに東電は中部電力、関西電力などから電力の応援融通を受けていたが、日本卸電力取引所(JEPX)の周波数五十ヘルツ圏のスポット価格は一キロワット時当たり四十円を超えつつあった・・・

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