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連載

西風 480

難産の「新美術館」支えた地元愛

2021年5月号

 構想から四十年近くを経て、大阪中之島美術館が六月に竣工、来年二月に開館する。水の上に黒い立方体が浮かんでいるような印象的な外観がすでに立ち上がった。
 大阪市北区中之島の大阪大学医学部跡地に美術館を造ろうという構想は三十八年前、一九八三年に生まれたが、ここまでの道は決して平坦ではなかった。
 そもそものきっかけは大阪の実業家・山本發次郎のコレクションを遺族が大阪市に寄贈したことだった。地元出身の世界的画家・佐伯祐三の絵画を含む六百点もの作品群だった。これを土台に八九年の市制百周年記念事業の一つとして水都・大阪のシンボルである中之島に「近代美術館」を建設しようという構想が持ち上がった。
 当初は美術館の隣にはオペラハウスを建設する派手な構想だった。バブル経済の絶頂期を迎えようとする時代。大阪中之島美術館準備室も年間三十億円の資金で有名絵画を買い始めた。世界的に人気の高いモディリアーニの「髪をほどいた横たわる裸婦」、ルネ・マグリットの「レディ・メイドの花束」、サルバドール・ダリの「幽霊と幻影」などを買い集めた。
 ところが、具体的な建設計画を練ろう・・・