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経済

武田薬品が「M&A博打」で大敗

コロナ治療薬「開発失敗」の深い傷

2021年5月号

 武田薬品工業(以下、武田)のコロナ感染症治療薬「ITAC」の第三相臨床試験の失敗が、関心を集めている。「ITAC」は、コロナから回復した患者から採取した血漿(回復期血漿)の免疫機能を利用したもの。昨年三月、臨床開発に着手し、その後、米CSLベーリングなど十三社との共同開発へと発展した。臨床試験は米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が主導し、日米など十八カ国から約五百人の患者が参加した。
 回復期血漿は重症感染症に効果があり、コロナにも同様の効果が期待された。中国深圳の医師たちが昨年三月、五人のコロナ重症患者に回復期血漿を投与したところ、全員の状態が改善したと『米医師会雑誌』に報告している。米食品医薬品局(FDA)は昨年八月、入院患者に対する緊急使用を許可している。ところが、昨夏ごろからコロナの再感染が報告され、回復期血漿の免疫力に疑問が持たれた。さらに、十月にはインドの医師たちが、回復期血漿が無効であったというランダム化比較試験の結果を英『BMJ』誌に報告している。今年に入り、英国の多施設共同研究(RECOVERY試験)でも同様の結果が確認された。
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