三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

バイデンはアジアを守れない

口約束「最重視」を見透かす中国

2021年6月号特別リポート


 米国のジョー・バイデン大統領のアジア太平洋戦略に、「本当にアジアを守れるのか」という疑念がインド太平洋諸国から挙がっている。バイデン大統領は、日本の菅義偉首相を「最初の対面会談の相手」に迎えるなど、「アジア最重視」の姿勢を続けているが、肝心の東アジアでの軍備強化は、明らかに遅れている。
 就任から四カ月余りで、イスラエル=パレスチナ紛争の再燃、ロシアとその同盟国の傍若無人、アフガニスタンでの内戦激化と、アジア以外でも喫緊の安全保障問題が立て続けに持ち上がった。ホワイトハウスはそれぞれの対応に追われている。
 中国とロシアは、バイデン政権の態勢が整わないうちに、米国を揺さぶる構えだ。バイデン政権の「外交と抑止力」の看板は、発足初年度からメッキの剥離が止まらない状態だ。

南シナ海で「追い払われた」米艦船

 象徴的な事件が起きたのは、五月二十日のことだった。
 横須賀を母港とする米海軍のミサイル駆逐艦「カーティス・ウィルバー」が、ベトナムと中国が領有権を争っている西沙諸島・・・