三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中国が狙う世界「天然ガス覇権」

巨大需要を背景に「価格支配」へ

2021年6月号

 世界の天然ガス需要の伸びの四割を占め、今年、液化天然ガス(LNG)で日本を抜き世界最大の輸入国となるとみられる中国で、世界のエネルギー市場に大きな影響力を持つ新しい企業が動き出した。中国の天然ガスパイプライン網をすべて傘下に収めた国家管網集団(パイプチャイナ)である。トルクメニスタン、ロシアなどユーラシア大陸を巡る天然ガスパイプラインが最終的にパイプチャイナに結ばれ、同社が決める価格が「日本を含む世界のLNG市況を動かす」(欧州のエネルギーアナリスト)可能性が高い。
 三月末、中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油化工(シノペック)、中国海洋石油総公司(CNOOC)の三社が持つすべての天然ガスパイプラインがパイプチャイナに移管された。先行して中国の各省傘下のエネルギー企業の天然ガスパイプラインはパイプチャイナの保有に移っている。
 一見すれば、天然ガスを生産・輸入するエネルギー会社と輸送ネットワークであるパイプライン網を切り離す、いわゆるアンバンドリング(分離措置)で、先進各国で進められているエネルギー改革、市場自由化の一環のように考えられる。実際、中国では「・・・