三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

ゴルフ・松山「快挙」を支えた職人

「燕三条の研磨師」が生み出す名器

2021年6月号

 マグノリアレーンに春が来た―。世界最高峰のゴルフトーナメント、マスターズの中継で流れる曲「オーガスタ」はこの歌いだしで始まる。昨年は新型コロナの影響で秋に開催されたため、二年ぶりに春に開催された大会を松山英樹が制し、日本のゴルフ業界にも束の間の春が来た。
 今回の日本人初優勝は、日本メーカー初のマスターズ制覇でもあった。松山は昨年まで、ピンやキャロウェイ、テーラーメイドといった外国ブランドのドライバーを渡り歩いてきた。しかし今回、彼がティグラウンドで握っていたのはダンロップのドライバーだった。そのクラブに使用されているシャフトも日本のグラファイトデザイン社製だったほか、ボールやアイアンもダンロップ製。また、使用したウェッジのクリーブランドは現在、ダンロップ傘下になっている。
 使用したアイアンは「スリクソン」ブランドのZ-フォージド。松山はこの間、ドライバーについては「浮気」をしてきたが、アイアンについてはアマ時代からスリクソン一本槍だ。しかし、松山の歴代使用アイアンは、厳密な意味ではダンロップ社製ではない。そこにはマスターズでの戦いを人知れず支えた職人がいた。{・・・