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米社会が「過剰民主主義」で大混乱

「極端な正義」が深める分断

2021年8月号

 全米各地の教育現場や教育委員会が大荒れだ。
 人種差別や性的少数派の最前線が、「差別を子供たちにどう教えるか」に移っているからだ。民主党の急進派が、「米国の構造的差別」や「性的少数派保護」を教育の場に持ち込もうとするのに対して、共和党支持層の白人父母が猛烈に反発している。
 民主党内の急進派は、政権奪還を機会に、人種・性差別、性的少数派問題への取り組みを強めた。だが、穏健白人層には「急ぎすぎ、やりすぎ」という戸惑いが広がる。民主党内では、「急進派が暴走すると、選挙に影響がある」との懸念が、早くも強まっている。
 今年七月、テネシー州は公共施設や大企業の女性用トイレと更衣室に「トランスジェンダー使用可」の掲示を導入する州法を施行した。一見すると、進歩的法制のように見えるが、共和党が握る同州政府の狙いはそうではなかった。
 トランスジェンダーを含むLGBTQ各種団体は早速、「特定の人々を標的にした差別」と非難の声を上げた。「使用可」表示のないトイレ・更衣室は、あたかも使用できないように映るからだ。
 テネシー州側は、「この州法のどこが差別・・・