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WORLD

世界最凶「中国ハッカー」の猛威

日本は被害実態すら把握できず

2021年8月号

 稚拙な日本語や日本では使われない簡体字のメール。中国のハッカーといえば長年、すぐにそれと分かる粗雑さで知られてきた。だが、それは今や昔の話だ。
 米国は今年七月、中国のハッカーこそ、ロシアを凌ぐ、米国最大の脅威と位置付けた。日本政府や欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、「ファイブ・アイズ」諸国も同調した。ロシアのランサムウェア攻撃が児戯に見えるほど、日米欧の脅威となった中国のハッカーとは、何者なのか。
 米国のサイバー・セキュリティー専門家は、「今の中国人ハッカーは、過去のハッカー群とは全く違う」と言う。
 好例が「スピア(槍)フィッシング」の手法である。フィッシングとは、偽メールで「荷物のお届けに上がりましたが不在で持ち帰りました」などと通知し、利用者を偽サイトに誘導して、個人情報を取得するものだ。読者もお馴染みだろう。多くの場合、詐欺を仕組む側は、利用者が何者かを知らずに、無差別に送ってくる。
 これに対し「スピアフィッシング」とは、矛先の鋭い槍同様に、ピンポイントで相手の関心を引き付け、「おや」と思わせて、行動を起こさせる。{・・・