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経済

《地方金融の研究》山口銀行

会長解任「ドタバタ劇」の真相

2021年8月号

 取締役会が始まったのは今年六月二十五日、午前十一時をわずかに回った時間だったとされる。
 山口県下関市にある山口銀行本店八階会議室。同日午前十時から開催された山口フィナンシャルグループ(FG)の定時株主総会で再任・新任の手続きを終えたばかりの取締役らが全十人、顔を揃える中で、舞台の幕は開いた。
 この日の会議の最重要決議事項はほかでもない。代表取締役の選任だ。ただ山口FGは五月十四日の決算取締役会で吉村猛会長兼グループCEO、椋梨敬介社長兼グループCOO両代表取締役の再任を内定(肩書はいずれも当時)。ニュースリリースとして即日開示している。そのため取締役会ではこれを追認するだけで終わるとみられていた。
 ところが議長役を務めていた吉村会長がいざ両者の再任決議を諮ろうとした矢先、ちょっとした横やりが入る。取締役の一人が吉村氏と椋梨氏の代表取締役選定に関する採決を一緒にやらないで、別々に分けて行うよう提案。これが認められてしまうのだ。
 そして吉村氏が気を取り直すかのように自らの再任案について挙手を求めたところ―、自身を除き「誰も手を挙げなかった」・・・