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社会・文化

コロナで役立たず「国立病院機構」

巨額補助金と天下りの「無法地帯」

2021年10月号

 新型コロナウイルスの第五波が収まりつつあるせいか、今冬には第六波の到来も予想されるのに、入院病床の確保という喫緊の課題は今も打開されていない。度重なる緊急事態宣言に対する慣れと反発もあって、第五波のピーク越えで行き過ぎた緩和ムードが広がればより深刻な試練に直面するのは必至であるにもかかわらず、カギを握る組織の動きは鈍い。
 本誌既報の通り、新型コロナウイルス感染症対策分科会会長・尾身茂が理事長を務める独立行政法人「地域医療機能推進機構(JCHO)」は、第五波の最中の七月三十一日現在、関連施設の総病床数の五・七%しかコロナ専用に振り向けず、患者の受け入れもコロナ病床の三九%にとどまっていたとして、批判を浴びた。
 そのJCHO以上に、コロナ病床の確保に後ろ向きである組織がある。独立行政法人「国立病院機構(国病)」だ。
 国病は日本最大の病院グループで、全国に百四十病院、五万三千二百二十三床(二〇一九年十月一日現在)を有し、六万二千五百八十一人(二一年一月一日現在)の職員が勤務する。国病のルーツは、戦前の陸海軍病院と傷痍軍人療養所にある。それぞれ戦後は国立病・・・