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連載

大往生考 第22話

コロナワクチンの「負の面」
佐野 海那斗

2021年10月号

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の第五波はどうにか一段落しそうだが、冬の再流行は避けられそうにない。それまでは束の間の落ち着いた日々が過ごせそうだ。筆者が外来でフォローしている患者でも、「ワクチンを打ったことだし、緊急事態宣言が解除されれば、子ども夫婦のところに遊びにいくつもり」などと顔をほころばす人もいる。
 ワクチンの効果は大きいが、しかし副作用のない薬はない。コロナワクチンも例外ではない。知人の医師は改めて、そのことを痛感させられる経験をした。
 知人は、首都圏の総合病院で働く五十歳代の内科医だ。もとはアレルギーや膠原病の専門だったが、管理職になってからは、自らの専門領域の診療は若手医師に任せ、知人自身はそれ以外の患者を受け持った。彼の外来は、高血圧や高脂血症で長く通院している人が大半だ。不眠や倦怠感など、不定愁訴だけで受診している人もいる。
 八十歳代の男性患者もそんな一人だった。五年ほど前に、難病の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を発症し、地元の大学病院で治療を受けた。ITPとは、自己免疫疾患の一種で、ウイルス感染などの後に血小板に対する自・・・