三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

コロナ飲み薬で厚労省が「大失態」

購入争奪戦で「日本完敗」の内幕

2021年11月号

 新型コロナウイルスに効く飲み薬ができたという世界中にとっての朗報が、日本ではまたも厚生労働省の失態を露見させる材料を提供している。米国の製薬大手メルク社が米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請した経口薬モルヌピラビルをめぐる判断ミスと獲得競争の出遅れのことだ。
 新型コロナ対策では、口から簡単に飲める経口薬は、感染症封じ込めの「最後の一ピース」(新型コロナ治療経口薬を開発中の塩野義製薬の手代木功社長)になる。
 メルク社は十月一日、軽症から中等症の患者七百六十二人が対象の臨床試験で、モルヌピラビル投与で入院、死亡のリスクが四八%低下したと発表した。被験者の約八割が感染していたデルタ株などの変異株にも有効で、副作用の懸念も小さいと判断、同社は同十一日にFDAへ申請したと発表した。
 感染時に一日二回、五日間内服すればよく、中外製薬のロナプリーブや英グラクソ・スミスクラインのソトロビマブなど既に市販された注射剤より遥かに手軽だ。
 問題は、日本では十分な量を確保する見通しが立っておらず、「承認されても使えない」(厚労省関係者)懸念があることだ・・・