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米社会に広がる医療費「債務地獄」

一億三千七百万人が「借金苦」に

2020年1月号

 世界一医療費が高い米国で、医療債務が深刻化している。
 医療専門家の調査では、総人口の四割超の一億三千七百万人が、医療費支払いに問題を抱えていることが分かった。個人破産の三分の二が「医療費が払えない」ことに起因している。自殺や無理心中、うつ病といった、悲劇も頻発している。米国を覆う医療債務地獄に、日本が陥る危険はあるのだろうか。
 衝撃の調査が発表されたのは、「総合内科ジャーナル」という医療専門誌の二〇一九年八月号。調査チームが、聞き取り調査を基に、全米の総数を推計した。ほぼ半数が、医療費支払いのプレッシャーから生じる「心理的問題」をあげた。現実に債務不履行になる「物理的問題」も三割近かった。
 深刻な医療債務が生じるのは、米国の医療費が世界一高い水準にあるからだ。全米の医療費は一八年に三兆六千五百億ドルに達した。ざっと四百兆円で、ドイツ一国の国内総生産(GDP)に迫る金額である。医療債務総額では一兆ドルと見積もられ、これだけでメキシコやインドネシアのGDP並みである。一人当たり年間医療費は一万ドル超で、日本の倍以上だ。

一生消えない医療債務取り立て・・・