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連載

Book Reviewing Globe 451

国際秩序をどう再構築するか

2021年12月号

 二〇二〇年春からのコロナ危機がもたらした地政学的な変化のうち、もっとも巨大で、そして長期的な射程を持つもの(geopolitical long tail)は米中対立であるだろう。米中両国は、コロナ感染の発生地をめぐるさや当てがエスカレートし、危機を共に乗り切るための協力関係を築くことができなかった。パンデミックへの取り組みを契機に国際秩序を再構築し、グローバル・ガバナンスを強化することができなかった。世界はリーダーシップ不在に陥った。国際秩序論の大御所であるプリンストン大学のジョン・アイケンベリー教授は「国際秩序がこうまで急激な崩壊過程を見るのは一九三〇年代以来、初めてである」と記した。
 また、米中対立は、「西側」にも亀裂を招いた。二〇二〇年三月二十六日に開かれたG7(先進七カ国)外相会議では、当時のポンペオ米国務長官が、新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼ぶべきだと主張したのに対して他の外相が反対、共同声明を出すことができなかった。米主催のG7サミットも不発に終わった。「米国がこれほど小さく見えたことはない」と著者は言う。
 トランプ政権のコロナウイルス対・・・