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連載

現代史の言霊  第44話

十二月の退陣 -一九九一年のソ連崩壊-
伊熊 幹雄

2021年12月号

《あなたの地位に私が就く、と言うつもりです》
ボリス・エリツィン (初代ロシア大統領)

 ロシアの女性と言えば、世界中で同じような見方がある。
 若い頃は、妖精がこの世に降りてきたように、世の男性の目を引き付ける。だが、年齢を重ねるとともに体重も増して、同じ人物とは思えないような変容をする。
 ロシア人に対するこうした偏見のおかげで、得をしたのが、最初で最後のソ連大統領、ミハイル・ゴルバチョフだった。
 彼自身の政策や行動が世界史を変えたのは言うまでもないが、ライーサ夫人の存在がなければ、米欧でこれだけ高く、人間性を評価されただろうか。
 ライーサは一九三二年、シベリアに生まれた。「ソ連共産党書記長夫人」として、世界のメディアの前に登場したのは、一九八〇年代後半、五十代前半の時だった。

「ソ連指導者」観を変えた夫人

 ライーサの清楚な麗人ぶりは、即座にカメラマンの目を引いた。
 遠目にも知的なロ・・・