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社会・文化

理念なき日本の「食料戦略」

泰平の「飽食時代」の終焉

2021年12月号

 国連気候変動枠組み条約第二十六回締約国会議(COP26)は、妥協を重ねた「成果文書」を採択するのがやっとだった。しかし、深刻さを増している食料に関する国際会議と比べれば上出来だ。そのくらい食料問題は切実で妥協を許さない。しかも、食料を海外に依存している日本で危機感がほとんど認識されていない。理念に乏しい農業政策を続ければ、日本の「飽食」が終焉を迎えるのは時間の問題だ。      
 新型コロナウイルスの感染拡大は、グローバルなサプライチェーン(供給網)の脆さをあぶり出した。平時ではあまり意識されないが、チェーン(鎖)が切れれば直ちに供給は断絶する。もちろん食料も例外ではない。サプライチェーンが高度化し、食料供給のリスクは多様化・複雑化している。これまでは、主に戦争、自然災害、港湾ストなど局地的で期間限定のリスクが想定されていた。しかし、コロナの感染拡大はグローバルで終息時期も見通せない。
 途上国では、感染拡大によって食料の供給が不安定になり、飢餓が増大する恐れが高まっている。米国やオーストラリアでは、食肉処理場で働く外国人労働者の確・・・