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経済

《地方金融の研究》渡島信用金庫(北海道)

まさかまさかの「東京進出」

2022年2月号

 北海道を代表する駅弁と言えば何と言っても「森のいかめし」だろう。太平洋戦争開戦の年、一九四一年の旧国鉄(現JR)函館本線・森駅の開業とともに発売され、昨年で八十周年。その森駅が位置する森町(茅部郡)に本店を置き、「いかめし」より長い百十年超の歴史を誇るのが渡島信用金庫だ。
 設立されたのは一九一一年というから元号では明治四十四年に遡る。有限責任森村信用組合として誕生し、戦後、信金に転換した。北海道信金や室蘭信金など道内に現在二十金庫ある信金の中でも「最古」の存在として知られている。
 そんな渡島信金が昨年夏、「大きな決断」(関係者)に踏み切り、地方金融界に衝撃をもたらした。何と二〇二三年中をメドに「東京支店」を開設すると表明したのだ。遠隔地の信金が東京に出店するのは異例中の異例。しかも地域金融機関にとって家賃負担や人件費のかさむ「東京支店」はこのところ撤退や共同店舗化、空中店舗化といったリストラの対象にこそなれ、新規開設のターゲットとはみなされていなかった。それなのに敢えて東京に店舗を進出させようというのである。

「狂気の沙汰」との声も・・・