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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》日米地位協定 ​​​​​​​

終わりなき米国の「疑似占領」

2022年2月号

 新型コロナウイルス・オミクロン株の爆発的拡大の原因は、在日米軍と日米地位協定のせいだとする「反米軍基地」派の理屈と、「臭いものには蓋」式の政府・与党の思考停止が、深層で交錯している。十年一日のごとく目の前の選挙や支持率といった近視眼的な損得で動く保守、リベラル両翼の生態が、自国は自分で守るという意味での「独立」を妨げてきた戦後の宿痾を改めて浮き彫りにした。
 一月十六日、米軍海兵隊普天間飛行場の移設を巡って揺れる沖縄県名護市の市長選挙が告示されると、新人の岸本洋平候補の出陣式に臨んだ玉城デニー同県知事は米軍批判に力を込めた。
「米軍由来のオミクロン株が市中に広がった。米兵や家族にPCR検査を求めなかったことが、残念だ。地位協定の構造的な差別であり、(日本国内の)米軍基地の七割を抱える沖縄の現実だ」
 昨年十二月中旬に在沖縄米軍基地の従業員の感染が判明後、感染者数が急拡大した沖縄県では感染や濃厚接触で出勤できなくなった医療従事者が続出し、医療崩壊に直面した。ただ、「県民の健康を脅かしたのは感染防止策をとらなかった在日米軍の相も変わらぬ占領軍意識と、日米地位・・・