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経済

欧州「スタグフレーション」の足音

独仏が深刻な経済危機に

2022年4月号

「ロシアのウクライナ侵攻が欧州に暗い影を落とした」。欧州中央銀行(ECB)ラガルド総裁は三月十七日、フランクフルトでの講演の冒頭でこう始めた。
「それは領土の主権と国際法と人権の尊重に基づいた我々の安全保障の基本的信条に疑問を突きつけている。そして、敵対的なふるまいを行う者への経済的依存から生まれた我々の共同体の脆弱性を明らかにした。欧州の指導者たちが先週宣言したように、この侵略戦争は欧州の歴史における構造的変化をもたらすものだ」
 ウクライナ侵攻の二月二十四日、欧州経済は悪夢のシナリオへ移行した。コモディティ市場の需給均衡は崩壊し、実体経済や金融市場のリスクは極度に高まっている。戦後最大の不確実性が目の前に存在する。「スタグフレーション」の可能性についてECBは公に否定するが、現下の地政学の変化で現実味は格段に高まったといえる。

エネルギー面でのジレンマ

 欧州を俯瞰すれば、ウクライナ情勢に関係なく、インフレが加速している。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)は三月十七日、二月の消費・・・