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経済

《クローズ・アップ》磯野 裕之(王子ホールディングス新社長)

成長なき業界トップを待つ難路

2022年4月号

 印刷用紙の王子製紙やティッシュペーパーなど家庭紙の王子ネピアなどを傘下に持つ王子ホールディングス(HD)の社長に磯野裕之取締役(六十一歳)が四月一日付で就任した。前任の加来正年氏(六十六歳)は就任三年で交代し、代表権のある会長に就いた。
 社内でも業界内でも順当な人事といわれるが、王子HDの経営陣にとっては危機感をもったうえでのトップ交代だった。
 王子HDの二〇二二年三月期業績予想は売上高が前期比六・七%増の一兆四千五百億円、営業利益が四一・五%増の一千二百億円と好業績。営業利益は過去最高となる見通しだ。コロナ禍からの回復としては市場から高い評価を受けている。だが、やや長いレンジで業績の推移をみると別の姿も浮かび上がる。
 売上高は一兆五千億円を挟んで過去七、八年、一進一退を続けているからだ。二二年三月期の売上高は五年前とほぼ同水準。「利益は増えてもトップライン(売上高)を伸ばせない」という構造問題がはっきりと表れている。トップラインが伸びないのは国内市場の縮小に加え、海外事業の規模が拡大せず、全体として成長力が衰えていることを示す。利益だけが増えるの・・・