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経済

経営暗転の「日本M&Aセンター」

「不正会計」はなぜ起きたか

2022年4月号

「コミットメント経営」と聞いて誰を思い浮かべるだろうか。ビジネスパーソンならほとんどが、日産自動車のカルロス・ゴーン氏だろう。強烈なワンマン経営は絶頂ももたらしたが、最終的に日産の衰退を招き、失脚で終焉を迎えた。
 同じ轍を踏みかねない御仁がいる。M&A仲介最大手の東証一部上場企業、日本M&Aセンターホールディングスのゴーンこと、三宅卓社長だ。同社は二〇二一年三月期まで十一年連続で最高益を更新、時価総額も一兆円突破と絶好調だったが、昨年暮れ不正会計を発表して以降、道のりは暗転している。
 不正はホールディングス傘下の日本M&Aセンターで成約前の仲介業務契約書の写しなどを偽造し、売上高を前倒し計上した例が八十三件あったというもの。元凶が「三宅社長のコミットメント経営」(同社社員)だという。
 同社が本社を置く東京駅前の鉄鋼ビルディング二十四階の男子トイレ個室ではしばしば、すすり泣く声がする。来訪者は「親か誰かわからないが、身内に携帯電話で泣きながら理不尽な上司の仕打ちを訴えていた」と証言する。声の主はM&Aセンター社内に戻った。
 ノルマが達成でき・・・