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WORLD

《世界のキーパーソン》ウエイン・ラピエール(全米ライフル協会CEO)

銃規制に抗う凄腕ロビー活動家

2022年6月号

 米国で悲惨な銃犯罪が続いている。五月十四日にニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットでの銃乱射で、十人が殺された。十日後の二十四日には、テキサス州の小学校での銃乱射で、小学生十九人を含む二十一人が殺された。どちらも犯人は十八歳。銃を入手したばかりの犯行だった。
 ジョー・バイデン大統領は強い怒りを表明し、「我々は、ガン・ロビーに対して立ち上がらなければならない」として、犯人だけでなく銃規制を阻むロビー団体を糾弾した。ラピエールは、その筆頭格である全米ライフル協会(NRA)の最高経営責任者(CEO)を、二十年以上、務めている。
 米国では四億丁以上の銃が出回っている。数年前まで「三億丁」とされていたが、新型コロナウイルスの外出規制などの期間中に、さらに増加した。これとともに、銃による死者(自殺も含む)も激増して、二〇二〇年には四万五千人を超えた。ある研究者の調査では、この年、一歳~十九歳に限ると、銃による死者(四千三百五十七人)は、交通事故の死者数を初めて上回って、死因の中で最高を記録した。
 ところが、こうした現状もNRAにとっては、格好の宣伝材料・・・