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WORLD

世界食糧危機の隠された真実

戦争長期化を望む「勝ち組」の国々

2022年7月号

 ロシアのウクライナ侵攻により、世界食糧危機の懸念が高まっている。小麦を筆頭に重要な食糧輸出国であるロシアとウクライナから出荷が止まり、国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数は史上最高値水準を推移している。
 世界で極端な飢餓に直面する人は、昨年の一億九千三百万人(推計)から、今年は二億七千六百万人に急増する見通しだ。
 国連や国際援助団体は「飢餓と貧困の増大」の危険性を警告しているが、この危機でちゃっかり稼ぐ国々もある。長期的には、穀物生産余力のある米国やオーストラリア、インドが「勝ち組」になりそうだ。
 タイのプラユット首相は、「軍事独裁者」として評判が芳しくない。
 だが、今回の食糧危機に当たっては、根が正直なところを見せた。今年五月、ベトナムに対して「コメの生産カルテルを結成しよう」と呼びかけたのである。
 タイ政府の報道官は五月末の会見で、「我々の目的は、米価を上げて、農家収入を増やすことだ」と素直に本音を語った。当然のことながら、国際援助団体から「こんな危機の最中に、カルテルを作って便乗値上げなんてけしからん」と厳しい批判・・・