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連載

新大学評判記 第33話

東京大学教養学部 有名無実のリベラル・アーツ

2022年9月号

 東京大学教養学部は旧制第一高等学校の流れを汲む。学士入学など一部を除き、全新入生は二年生まで教養学部に所属する。リベラル・アーツを重視し、法学部や医学部の前座でなく、教養学部で学ぶこと自体に価値があるという理念を掲げる。初代教養学部長で、後に東大総長を務めた矢内原忠雄は、「人間として片よらない知識をもち、またどこまでも伸びて往く真理探求の精神を植えつけなければならない」と語っている。現在の学部長である森山工は「教養学部を語ることは東京大学を語ること」とまで言う。
 その教養学部で騒動が起きている。コロナに感染した学生に対し、欠席の連絡が遅れたことを理由に、補講を認めず、留年とした。納得できない学生が文部科学省で会見したところ、翌日には森山学部長名で学生を批判した。学生は東大を訴え、泥仕合となった。その過程で、教養学部が学生の点数取り違えを認めたことも明らかになった。この騒動からは、教養学部の崇高な理念と、学生軽視ともいえる実態との乖離が見えてくる。

極まる「学生軽視」

 教養学部は多数の学生を抱え・・・