三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

三菱UFJ信託「不祥事事件」の余病

異様な内部統制と「相互監視」

2022年11月号

「今やほとんど監視社会、密告社会とでもいった有り様ですよ」。中堅行員の一人が肩をすくめながらこう嘆く。
 国内信託二強の一角、三菱UFJ信託銀行が「統制ムード」一色に包まれている。発端となったのは昨年十一月から十二月にかけて相次いで発覚した二つの不正事案だ。
 一つは東京・中野支店に勤務していた五十歳代のベテラン女性行員が、計十四人の顧客の預金口座から合わせて九千七百五十万円の現金を抜き取っていたというもので、自主点検に基づく社内調査で昨年十一月八日発覚。同行では十二月十三日付でこの女性行員を懲戒解雇している。
 そしてもう一つが本部の事務管理部に所属していた三十歳代男性行員による“犯行”。顧客二人の口座から不正に現金を引き出して四百四十二万円を着服、生活費などに充てていたもので、顧客からの問い合わせで十二月二日判明。同十七日付で同じく懲戒解雇し、同二十日になってこれら二つの事案をまとめて公表した。

犯行の「意外性」と「類似性」

 第一の事案では当初、着服・・・