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経済

名ばかり「防衛費増額」の茶番

財務省が阻止した「日本版DARPA」

2022年12月号

“その日”の前日、東京・永田町にある雑居ビルの一室に、国家安全保障局(NSS)の局長・秋葉剛男の獅子吼が響いた。
「情報漏洩が多すぎる! 『総合防衛費』という言葉はもう使わない」
 国内総生産(GDP)の二%―。首相・岸田文雄が五月の日米首脳会談のあと、防衛費を五年以内に北大西洋条約機構の加盟国水準へ引き上げると表明して以来、永田町では財源議論が展開されてきた。今年度当初予算の防衛費は五・四兆円。従来、GDP比一%にとどめられてきたが、二〇二七年度までに倍増させるには毎年八千億円規模の増額が必要になる。
 それを回避するのが総合防衛費、すなわち政府が創設する安全保障関連予算の特別枠である。各府省が担っている①科学技術研究、②公共インフラ整備、③サイバー防衛、④友好国との国際協力の予算の中から一部を抜き出し、安全保障に活用する仕組みだ。実態は、詐術とも言える防衛費の“水増し”にほかならない。
 この方針は、十一月九日に開く内閣官房の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」で表明されるはずだった・・・

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