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経済

武田薬品「デング熱ワクチン」の商機

米欧寡占市場に分け入れるか

2022年12月号

 世界のワクチン市場は米ファイザー、メルク、英グラクソ・スミスクライン、仏サノフィの寡占だ。ここにコロナパンデミックで、米モデルナが加わった。二〇二一年の世界のワクチン市場は一千十五億ドルで、この五社で八五%を占める。パンデミックの際のワクチン開発は、このような企業が鎬を削る。そんな米欧寡占の市場に、武田薬品工業がデング熱ワクチンの世界展開で切り込んでいる。すでにワクチン開発後進国に堕ちた日本企業としては、珍事といえる。
 デング熱は世界で最も急速に拡大している蚊媒介感染症だ。発熱、頭痛、筋肉痛といった症状が特徴で、熱帯・亜熱帯を中心に、世界人口の半分が脅威に曝されている。毎年約四億人が感染し、約二万人が出血熱などを合併して亡くなっている。一四年の夏には東京・代々木公園を中心に我が国でも流行し、近年、欧米でも流行が確認される地域が拡大している。
 十一月九日、英『ネイチャー』誌は、武田薬品が開発したデング熱ワクチン「QDENGA」を紹介する記事を掲載した。インドネシアで承認され、来年から六~四十五歳を対象に大規模接種が始まると伝えた。同誌は「デング熱に感染したことが・・・

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