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経済

半導体復活「官民連合」の甘い夢

成否を決めるのは米国

2022年12月号

 世界最先端から大きく後れを取った日本のロジック半導体の復活を目指す新会社「Rapidus(ラピダス)」が動き出した。トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、キオクシアなど有力企業が出資者に並ぶ布陣だが、肝心の微細化技術をどう獲得し、進化させるのか、スケジュールはあってもグランドデザインはない。船頭の多さと補助金の少なさは失敗の予感を漂わせる。日本の半導体産業を飛躍させた一九七〇年代の業界横断プロジェクトの再現は期待できないが、唯一の可能性は米中冷戦が激化し、米欧が台湾、韓国に次ぐ第三の半導体供給国をアジアに必要とした時だろう。
 人工知能(AI)からメタバース、自動運転まで高性能のロジック半導体なしの未来は想定できないが、それを製造できるのは現状では台湾のTSMC、韓国のサムスン電子、米インテルの三社のみ。三社は半導体上の機能レイアウトや配線などの物理的設計能力、そして回路微細化や三次元化の量産能力の二つを備えている。ラピダスが成功できるかは、この二つの能力の獲得にあるが、見通しはかなり暗い。経済産業省や出資企業が期待する「入手困難なオランダASML社の極端紫外線(EUV)露・・・

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