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経済

《クローズ・アップ》松山一雄(アサヒビール新社長)

「外部人材」に頼る悪しき伝統

2023年3月号

 アサヒビールの次期社長に、役員として招聘されてからわずか五年余りの松山一雄専務(六十二歳)が、就任する。予定されていた人事とはいえ、社内でマーケティングの能力を持ち、経営を担える人材を育てられず、困難にあっては外の力に頼ろうとする悪しき伝統が垣間見える。
 世間でアサヒビールと呼ぶ企業の構造は今や複雑だ。アサヒグループホールディングス(HD)という統括会社の下に日本市場のみを担当するアサヒグループジャパンという地域統括会社があり、その下にアサヒビールというビールなど国内アルコール飲料事業を担う会社がある。グループHDからみれば孫会社にあたるが、グループHDの売上高の過半は日本市場であり、その主力のアサヒビールは今なお屋台骨であることに変わりはない。
 松山氏は新卒で入社したゼネコンの鹿島からラベルプリンターなどのメーカーのサトー(当時)、P&Gファーイースト(当時)、その後、サトーHDに戻って社長となり、アサヒビールに入社。
 めまぐるしく会社を移りながら、実績を上げて上昇した「マーケティング専門のプロ経営者」といっていい。
 アサヒビール入社・・・

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