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連載

日本の科学アラカルト 151

次世代技術を支える「グラフェン」電子デバイス

2023年3月号

 炭素原子(C)だけで構成されている物質(単体)は複数の種類がある。ダイヤモンドとグラファイト(黒鉛)はいずれも炭素の単体だがその性質は大きく異なる。ダイヤが「地球上で最も硬い」などと表現される一方で、黒鉛は軟らかいからこそ鉛筆の芯に使うことができるのだ。
 この要因は、単体の原子構造にある。ダイヤは炭素原子が立体的に結合し硬い性質を現す。
 一方で、黒鉛では炭素同士が平面状に繋がったシート状の層が積み重なって構成されている。炭素同士の繋がりは「共有結合」と呼ばれる強い結びつきがある。しかしシート同士はファンデルワールス力(分子間力)という極めて弱い結合でしかないため、脆く剥がれやすい。このため、鉛筆では紙の上にシートが付着して残り、文字や線を書くことができる。
 このシートは炭素原子が六角形の格子で繋がったもので、「グラフェン」と呼ばれる。二〇一〇年にはグラフェンの分離に成功した科学者にノーベル物理学賞が与えられた。
 グラフェン内での炭素同士の結合力はダイヤのそれよりも強いため、二次元空間内では「ダイヤより硬い」と言っても間違いではない。引っ・・・

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