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経済

黒田日銀が遺した「金融の罠」

ウィリアム・ペセック(経済ジャーナリスト)

2023年4月号

 ―十年に及ぶ日本銀行の黒田東彦総裁時代に何が失われましたか。

 ペセック 
黒田時代によって日本経済は「構想」を失った。安倍晋三元首相が率いた自民党は、日銀がアクセルを踏めばインフレになり、生活がもっと豊かになるという素人レベルの勘違いをした。日本のデフレは経済沈滞の症状であって原因ではないことに気づかなかった。さらに深刻なのは、自信の欠如をもたらしたことだ。企業や国民が数年後には経済に活気が出ると信じれば、もっと財布の紐を緩めたはず。実際には先行きに不安があり、政府の目指した需要主導型の成長ができなかった。この連鎖は今も続いている。

 ―黒田時代の「異次元の金融緩和」をどう分析していますか。

 ペセック 
黒田氏はデフレを終わらせることができなかった。日本のデフレを終わらせたのはウラジーミル・プーチン大統領だ。しかも日本は、エネルギーや食料価格の高騰によって「悪いインフレ」に陥っている。「黒田バズーカ」は、政府の経済政策のプレッシャーを取り除くことが目的・・・

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