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WORLD

米韓「核の共有」の虚実

広島サミットを打ち消す「核軍拡」

2023年6月号

 背景に広島平和記念公園の原爆死没者慰霊碑。更に後方には原爆ドーム。主要七カ国(G7)首脳が記念撮影した場所で、「核なき世界」を訴えてきた岸田文雄首相が胸を張った。自ら「核軍縮に特に焦点を当てた初のG7首脳文書」と銘打ち、「核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する」とうたい上げた。
 ところが、世界は全く逆の流れにある。この文書自身、「ロシアによる核兵器の使用の威嚇」「中国による透明性や有意義な対話を欠いた、加速している核戦力の増強」を指摘し、北朝鮮やイランによる核開発にも触れた。
 世界の核兵器保有数は、七万発超を数えた一九八六年をピークに減少を続け、二〇二二年一月時点で約一万三千発まで減ったが、早晩、増加・拡散に転じるとの悲観的な見方も出始めている。
 世界で「核の拡散」が懸念されている場所の一つが、朝鮮半島だ。北朝鮮が七回目の核実験に踏み切る動きをみせ、韓国内の各種世論調査では、六割以上が「韓国独自の核武装」を支持している。米韓両国は四月二十六日の首脳会談で、核の傘を含む、米国の拡大抑止力の強化で合意した。尹錫悦大統領は共同記者・・・

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