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社会・文化

柔道界「有望選手争奪」が過熱

井上康生と新興実業団を巡る騒動

2023年6月号

「五輪金メダル確実」と言われる男子大学生の去就を巡り、全日本柔道連盟(全柔連)が揺れている。
「精力善用・自他共栄」――。講道館の創始者である嘉納治五郎が掲げた柔道の根幹をなす考え方だ。修行を通じて己を磨き、他者と共に成長するという教えで、勝利至上主義を戒める文脈で多用される。今やこの精神は廃れ、勝利を優先する考えがはびこるばかりか、己の利益を重視する柔道家が多い。挙げ句、全柔連で醜い争いが起きているのだから救いようがない。

東京五輪の立役者への不満の声

 実はここ二年、全国の柔道人口は微増に転じている。約二十年前の二〇〇四年、全柔連への個人登録者は大人から子どもまで合わせて二十万人を超えていた。その後、ほぼ一貫して減少を続け、二〇年には新型コロナの影響もあり十二万一千人程度にまで落ち込んだ。しかし二一年、二二年はわずかだが、増加に転じた。新型コロナによる減少の反動だけでなく、二一年の東京五輪で男女合わせて史上最多、九個の金メダルを獲得した日本人選手活躍の影響が大きい。
 東京五輪で大きな・・・

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