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経済

「NTT法廃止」という亡国

自民党が壊す通信の「安心安全」

2023年11月号

 杜撰なロジック、大義のない議論―。それを象徴するのが当初、自民党前幹事長の甘利明が漏らしたこのひと言である。
「東京電力法はないじゃないか。ならば、NTT(日本電信電話)法も要らない」
 NTTの完全民営化、すなわち政府に三分の一以上の出資を義務付けているNTT法の廃止議論は六月、にわかに自民党から火の手が上がった。その検討チームの座長を務めるのが、元経済産業相でもある商工族の重鎮・甘利だ。
 事の発端は政府が保有する時価五兆円規模のNTT株の売却収入を、岸田文雄政権の防衛費倍増構想の財源に充てる検討だった。ところが、今やその話は雲散霧消、誰も触れようとしない。当然だろう。かつての三公社(電電公社、専売公社、国鉄)の一角であるNTTの政府保有株を放出すれば、JT(日本たばこ産業)法の廃止にも波及せざるを得ず、所管官庁の財務省の反発は必至だからだ。総務省関係者は言い放つ。
「防衛費の財源探しはNTT完全民営化の口実だ。甘利座長に差し込んだのは柳瀬だろ」
 NTT副社長・柳瀬唯夫―。というより、安倍晋三政権の首相秘書官を務めた元経産審議官・・・

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