コロナ騒動が始まる前のこと、シンガポール政府芸術機関でインターンをするために、東京藝術大学大学院生が同国人材開発省にワークホリデーパスでの在留資格申請を行った。すると、「貴校が入国資格の世界大学ランキングにない」との返事。英語圏諸国が留学生受け入れの指標とする大学格付け評価でも、最も頻繁に用いられるＴＨＥ世界大学ランキング（二〇二二年版では一千六百六十二校が参加）には、母校の名はない。驚いた学生が大学事務局に問い合わせると、実践中心の当校に国際評価基準は意味がないのでリストに参加していない、と説明があった。
　第二次安倍政権が「今後十年間で世界大学ランキングトップ一〇〇に十校以上を入れる」という国家目標を打ち出し、一四年に文部科学省が「スーパーグローバル大学創成支援事業」を開始。全国七百八十六大学から三十七校が選ばれ、大学の国際化を進めてきた。日本最高峰の国立芸術総合大学たる東京藝大も、グローバル化牽引型指定校とされている。そんな国際化推進の目玉校のひとつが、外国の政府機関からまともな大学と認定されていないのだ。

音楽学部の留学生はたった一人・・・