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連載

日本の科学アラカルト 161

人工知能の特性をフル活用 日本の「お家芸」材料開発に光明

2024年1月号

 二〇二三年はChatGPTに代表される人工知能(AI)が注目された一年だった。二四年も引き続きAIの進化が止まることはなく、世界中で開発が進む。AIが能力を上げるだけでなく当然、これを活用するシーンも増え続けるだろう。「人間の仕事がAIにとって代わられてしまう」という危惧は当然ある。しかし一方で、AIを活用するからこそ人類に寄与する研究分野もある。
 たとえば材料科学のジャンル。高性能の鉄鋼材料といった、いかにも「材料」だけでなく、青色発光ダイオード(LED)やネオジム磁石、カーボンナノチューブといったものも、日本から生み出された最先端材料といえる。日本はこの分野で世界をリードし続けてきた歴史があり、「お家芸」ともいえる。
 材料科学が面白いのは、理論上は可能なはずの材料が簡単には作れないところにある。理想の材料を完成させるための試行錯誤の過程では、理論だけでなく勘や経験も必要になる。一種、職人の世界なのだ。AIを使ってその職人ワザを再現するだけでなく、むしろ凌駕するような材料開発ができないかという研究が進められている。
 東北大学や名古屋大学、大阪大学・・・

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