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社会・文化

震災で「食料難」を繰り返す日本

「備蓄軽視」農水官僚の大罪

2024年2月号

 能登半島地震の被災者の生活を伝える映像は、先進国とは思えないほど悲惨だ。特に心が痛むのは発災直後の食料不足だ。道路が寸断され「食べものはあるのに届けられない」という事態を招いた。この経緯は検証が必要だが、「プッシュ型の供給」(岸田文雄首相)に限界があることは明白だ。東日本大震災でも食料を含む救援物資を届けられなかった。当時の教訓を十分に生かすことができなかった点で「人災」の側面がある。

分散・回転備蓄こそ切り札

 東日本大震災の教訓の一つは、食料をできるだけ身近な場所に貯蔵する分散備蓄の重要性だ。「ニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料」(国連の食料安全保障の定義)を発災直後に確保することが、その後の避難や生活再建の起点となる。この定義にあるように、食料はカロリーだけでなく、アレルギーなど健康や宗教上の制約、離乳食や流動食など乳幼児や高齢者にも配慮が必要だ。被災直後の強いストレスを緩和する上で、好き嫌いも含めた日常に近い食事は大きな役割を果たす。
 これらに対応する上で、家庭備蓄を・・・

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