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社会・文化

米国「スポーツ賭博」の光と陰

水原一平が堕ちた闇の「蟻地獄」

2024年4月号

 多くの麻雀小説を残した阿佐田哲也(色川武大)は、ギャンブルの鉄則を「落ち目の人の逆を行け」と説いた。米メジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースでスター選手・大谷翔平の通訳を務める「盛り目」から、違法賭博の疑いで球団に解雇される「落ち目」に転じた水原一平には、賭博にせよ、人生にせよ、「落ち目」の存在を目にする環境がなかったようだ。対面での賭けと、ネットを通じたスポーツ賭博との最大の違いだ。
 米社会がスポーツ・ベッティング(賭博)の合法化を受け入れた背景には、ネット企業によるロビイングのみならず、スポーツ大国ならではの独特の文化が土壌としてあった。射幸心をあおる「裏社会」の悪質性を別にすれば、違法賭博にも通じるものがある。
 水原がドジャースを解雇される約一週間前、フロリダ州の裁判所で、アメリカンフットボールのジャクソンビル・ジャガーズの元職員、アミット・パテルに禁錮六年六カ月の判決が言い渡された。チームのクレジットカードを使って二千二百万ドル(約三十三億円)を着服した罪で起訴されたパテルの裁判では、奪ったカネのほとんどを、「ファンデュエル」と「ドラフトキングス」と・・・

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