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激変する中国の「産業地図」

米中対立で加速する「内陸台頭」

2025年5月号

 中国経済の積年の課題だった沿海と内陸の経済格差が思わぬ形で解消されつつある。外資の輸出製造業誘致で急成長した沿海部は2018年以降の米中対立で外資撤退が加速。今はトランプ関税で輸出の失速に直面する。一方でEV(電気自動車)、リチウムイオンバッテリー、太陽光発電パネルなど中国の民間製造業は人件費や土地の安い内陸に基盤を築き、若者が仕事を求め内陸に移動する。習近平政権が狙う内需主導の成長は内陸市場がカギを握っており、中国は今、内陸に成長の軸が移りつつある。

沿海部で消える若年労働者

 広東省東莞市。中国の中小製造業と台湾、日本、韓国など外資が電子機器や部品の巨大な生産エコシステムを築いた街だ。数年前まで市内の幹線道路や郊外の高速道路はコンテナ・トレーラーや大型トラックで混雑が常態化していた。だが、今は中国の対米輸出の4分の1を担う蛇口、塩田などの港に向かう道ですら渋滞は減った。広東省が代表する沿海部の経済不振は日々、深まっている。
 昨年末、深圳市の前海エリアに巨大な鉄骨の構造物が姿を現した。建築面積・・・

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